乾燥かんそう)” の例文
また美術の趣味を涵養かんようすることもなく、すこぶる乾燥かんそう無味な人間になり果てて、朝から晩まで事業々々とばかり心がけて年を送った。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
うつったものは乾燥かんそうされたワラであるし、屋根やねうらの高い小屋の木組きぐみは、一しゅんにして燃えあがるべくおあつらえにできている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わづかもちはさういふことでいくらもらないのに時間じかんつて、寒冷かんれい空氣くうきため陸稻をかぼ特色とくしよくあらはして切口きりくちからたちまちに罅割ひゞわれになつてかた乾燥かんそうした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
樹皮の乾燥かんそうしている老幹ろうかんに宿をかりるという、科学的な、又は自然的な関係からばかりでなく、自然の美的情緒を深めるためにも、梅の老樹を灰白色かいはくしょく
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
それは単に素地きじ乾燥かんそうがいいとか、塗が丁寧だとか、材料がいいからとかいうことだけではない。想うに村の人々の暮しに誠実なものがあるからである。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
草本帶そうほんたいには、乾燥かんそうしたところにえる植物しよくぶつ、すなはち『乾生かんせい』のものと、濕氣しつきのあるところにえる『濕生しつせい』のものとの區別くべつがあつて、前者ぜんしや岩石がんせき砂地すなじ乾燥かんそうした場所ばしよ
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
これは木材もくざい乾燥かんそうするのと、表面ひようめんから次第しだい腐蝕ふしよくしてるとにるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
こんな原始的な力を持つ紙は日本にはない。今は新しい法を取り入れて乾燥かんそうに鉄板を使うが、少し昔は皆野天干しであった。温突紙は厚さによって区別される。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しかも武蔵研究史料の上にも、従来の兵法に関する伝書的なものの無味乾燥かんそうに似たのとちがって、武蔵の風貌、心情など、当年の面影が脈々と汲みとれる所に尽きないおもしろさがある。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)