不取締ふとりしまり)” の例文
下宿は成るべく本陣に近い処に頼むとうのは、万事不取締ふとりしまり不安心だから、一行の者を使節の近処きんじょに置きたいと云う意味でしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この巡査にってから、悪いものは、泥棒じゃなくって、不取締ふとりしまりな主人であるような心持になった。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
貧に迫って難渋なれば難渋の由を上へ訴えておすくいを乞うとか何とか訴出れば上に於て御褒美もくだし置かれる、しかるを打捨て置いて袖乞に出る迄の難渋をかけると云うは、其の方不取締ふとりしまりで有るぞ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さて雑誌は益〻ます/\売れるのであつたが、会計くわいけい不取締ふとりしまりひとつには卸売おろしうりあるかせた親仁おやじ篤実とくじつさうに見えて、実ははなはふとやつであつたのを知らずにために、此奴こいつ余程よほどいやうな事をれたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
叔父の留守に不取締ふとりしまりが有ッちゃおれが済まん、明日あした厳しく叔母に……
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
得ざる事共にて甚だ家事不取締ふとりしまりなることなり殊に其家來は家の重役と云ひ先代より召使めしつかひし者の趣きなれば旁々かた/″\以て怪敷あやしきことに思はるゝ併し家來の儀は兎も角も子息の行方ゆくへ知れざることは一寸の打捨うちすて置れざる儀ゆゑ主税之助自分じぶん參向さんかう有られるやうに早々まかり歸りて急度きつと申聞べしと申渡され内記殿には
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)