一二いちに)” の例文
それから、一二いちに時間ばかり、亀は死にものぐるいで走りつづけたのです。そしてついに競走は亀が勝ってしまいました。
兎と亀 (新字新仮名) / ロード・ダンセイニ(著)
俗間に濶歩するお一二いちにの学生帽にあかの帯紙を貼りつけ、黒い髭をぴんと生やし、詰襟つめえりの黒服の右肩には緒縄おなわか何かのまがいの金モウルを巻きつけ
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
東京とうきやういたところにいづれも一二いちに勸工場くわんこうばあり、みな入口いりぐち出口でぐちことにす、ひと牛込うしごめ勸工場くわんこうば出口でぐち入口いりぐち同一ひとつなり、「だから不思議ふしぎさ。」といてればつまらぬこと。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一二いちにというわけで、足を揃えて歩むがごとき習い方をする書家の書道は、個々について見ますとき、誠に不見識で、是非とも百人が百人違った結果の字を書かなければならぬと思います。
あの恐るべき饒舌の何の名残も、あの金扇や日の丸の朱も、チョビ髭も、サーベルも、金モールも、お一二いちにの帽子も、何一つとして、其処には影の影だにとどめて居らないのだ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)