鐘楼しょうろうや堂宇は崩れ放題、本堂のうちも雀羅じゃくらの巣らしい。のぞいてみれば、観音像はツル草にからまれ、屋根には大穴があいている。そこらの足痕あしあとは、狐のか狸のか、鳥糞獣糞ちょうふんじゅうふん、すべて異界のものだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)