蘭軒の家では、文化紀元八月十六日の晩に茶山がおとづれた時、蘭軒の父隆升軒信階りゆうしようけんのぶしななほすこやかであつたから、定て客と語を交へたことであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
寛政九年には春水五十二、茶山五十で、蘭軒は僅に二十一である。わたくしは初め春水、茶山等は蘭軒の父隆升軒信階りゆうしようけんのぶしなの友ではなからうかと疑つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
五十四歳の隆升軒信階りゆうしようけんのぶしなが膝下で、二十一歳の蘭軒は他年の考証家の気風を養はれてゐたであらう。蘭軒が歿した後に、山田椿庭ちんていは其遺稿に題するに七古一篇を以てした。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)