江戸町奉行えどまちぶぎょう鍋島甲斐守なべしまかいのかみは、いつもその話を思い出して、その人間の中でもいちばん多いものは悪人ではなかろうかと思い、白洲しらすに出るたび、人間に嫌悪けんおを感じ、常に、不幸な職に就いたものだと
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)