若い母親には酔うほどの空想だった。そこへ家士の足守忠七郎あしもりちゅうしちろうがはせ入って来た、旅支度のままで脇の折戸からいきなり庭へ駆けこんで来たのである。
日本婦道記:箭竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)