皇女の薨ぜられた時には、皇子は知太政官事ちだいじょうかんじの職にあられた。御多忙の御身でありながら、或雪の降った日に、往事のことをも追懐せられつつ吉隠の方にむかってこの吟咏をせられたものであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)