田道たぢ)” の例文
田道たぢの家来が主人の手纏を取つて田道たぢの妻に持つてゆくと、妻はその形見を胸に抱いて自殺し、この夫妻の死はひろく世間から惜しまれ手厚く葬られた。
大へび小へび (新字旧仮名) / 片山広子(著)
ただの田圃とすこしも変りはない、その蛇田の向うの松原に田道たぢの石碑が立つてゐる。電車の中から礼をした。
東北の家 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
仁徳天皇の御代、北方の蝦夷えみしらが叛いた時、上野の勇将田道たぢを大将として征伐させたが、その時の蝦夷えみしはひどく強く、田道たぢは石の巻の港で戦死してしまつた。
大へび小へび (新字旧仮名) / 片山広子(著)
あとでもう一度戎夷えみしの兵が石の巻に攻め入つて田道たぢの墓を掘りかへした時に、墓の中から大蛇がいくつもいくつも出て来て敵兵を無数に咬み殺したといふ伝説があつて
東北の家 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
蛇田といふところはむかし戎夷えみしが叛いてこの上地に攻め入つた時、下野の勇将田道たぢが朝廷の命を受けて闘つたが、敵は強く田道たぢは戦死してしまつた。それをこの土地に葬つた。
東北の家 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
その後しばらく経つてまた蝦夷えみしが攻め込んで来て田道たぢの墓を掘りかへした。すると墓から大蛇が出て来て多勢の敵をくひ殺した。喰はれなかつた奴らもみんな蛇の毒気にあたつて死んだ。
大へび小へび (新字旧仮名) / 片山広子(著)