その中で一番にがい顔をしたのは池辺三山君いけべさんざんくんであった。余が原稿を書いたと聞くや否や、たちまち余計な事だと叱りつけた。しかもその声はもっとも無愛想ぶあいそうな声であった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)