柄付眼鏡ロルネット)” の例文
俗っぽい柄付眼鏡ロルネットかなんかを両手にもてあそんでさっぱり見映えのしないこの女、それが今や彼の全生活を満たし、彼の悲しみであり、よろこびであり、彼の現在願い求める唯一つの幸福なのだ。
アンナ・セルゲーヴナは柄付眼鏡ロルネットを当てがって、知り人を捜しでもするような様子で船や船客を眺めていたが、やがてグーロフに向かって物を言いかけたとき、その眼はきらきらと光っていた。
彼女は彼の顔を見るとさっとばかりあおざめたが、やがてもう一ぺん、わが眼が信じられないといった風に、恐る恐る彼の方をふり仰ぎ、両手のうちにぎゅっと扇を柄付眼鏡ロルネットもろとも握りしめた。