月光菩薩像がっこうぼさつぞう。そのまえにじっと立っていると、いましがたまで木の葉のように散らばっていたさまざまな思念ごとそっくり、その白みがかった光の中に吸いこまれてゆくような気もちがせられてくる。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)