公子と花世姫の真影は光長の弟子の光実みつざねが写している。光実には性信親王しょうしんしんのうや藤原宗子のあまり上手でもない肖像画がたくさんあるが、この二人の真影は光実の生涯におけるただ一つの傑作であろう。
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)