ところがどうしたはずみか、荷物を片づけているうちに、妙な本が一冊ころがり出て来た。コナン・ドイルの『失われた世界ロスト・ワールド』の廉価本れんかぼんである。
幻奇小説「失われた世界ロスト・ワールド」、「霧の国」なぞはドイルの深い科学的造詣からなった幻奇小説であり、有名なH・G・ウェルズが、小説家たる根底に、如何に科学者としての智識を誇っているかは
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)