高島十太夫が新九郎に語り出した稀代の人物というのは、この山村の渓流を下ること九里ばかりの園部そのべの町に、すばらしい道場を張っている大円房覚明だいえんぼうかくめいという者のことであった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)