あいを含む黒塗に、金を惜まぬ高蒔絵たかまきえは堂を描き、楼を描き、廻廊を描き、曲欄きょくらんを描き、円塔方柱えんとうほうちゅうの数々を描き尽して、なお余りあるを是非に用い切らんために、描ける上を往きつ戻りつする。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)