文政七年の元日は、棕軒正精が老中の劇職を辞して、前年春杪以来の病がえたので、丸山の阿部邸には一種便安舒暢べんあんじよちやうの気象が満ちてゐたかとおもはれる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)