某日あるひ五明楼玉輔ごめいろうたますけが人形町の末広亭から岡吉へ往って、木戸から客席の庭を通って楽屋の方へ往こうとしたところで、縁側の障子の外に微汚いよれよれの法衣をた男がしょんぼりと坐っていた。
寄席の没落 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)