暗澹あんたんたる燈火の下で、栄之えいしの絵にあるような、淋しい気品のある美人が踊っている。その両袖にしかと抱いているのは人形の首——ではない、乾坤山日本寺けんこんざんにほんじの羅漢様の首。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)