民族的記憶の名残みんぞくてききおくのなごり
もう四年前のことになるが、考えて見れば、寺田先生の亡くなられた年の夏のことである。 先生の最後の随筆集『蛍光板』を貰って、ひとわたりずっと読んで行ったところが、「冬夜の田園詩」という短い文章のところで、私は妙に底知れぬしみじみとした感じにう …