背後はいご
重苦しい六時間の授業が終って、侃は一人で校門を出る。午後三時の秋の陽光が、静かな狭い小路の屋根や柳に懸ってゐる。ここまで来ると、彼は吻とするのだ。或る家の軒下には鶏が籠に入れられて、大根の葉を啄んでゐる。向ふの日棚では赤い縁の蚊帳が乾してあ …