流浪の追憶るろうのついおく
私は友達から放浪児と言はれる。なるほどこのところ数年は定まる家もなく旅やら食客やら転々としたが、関東をめぐる狭小な地域で、放浪なぞと言ふほどのものではない。地上の放浪に比べたなら私の精神の放浪の方が余程ひどくもあり苦痛でもあつた。然しそれは …
題名が同じ作品
流浪の追憶 (新字新仮名)坂口安吾 (著)