魚鱗ぎょりん)” の例文
河北軍のほうは、えき算木さんぎをおいたようなかたち魚鱗ぎょりんの正攻陣をいている。曹操の陣はずっと散らかって、鳥雲の陣をもって迎えていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いいかけた軍之助の声は宙に消えて、同時に、早瀬をさかのぼる魚鱗ぎょりんのごとき白線、一すじ伸びきって泰軒の胸元ふかく!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
盛り上った所から四方へ拡がるに随って、反射の光は魚鱗ぎょりんの如く細々と打ち砕かれ、さざれ波のうねりの間にちらちらと交り込みながら、みぎわの砂浜までしめやかに寄せて来る。
母を恋うる記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
星形をした大きな池には、赤はすや青蓮が咲きほこり、熱帯魚がルビイ色の魚鱗ぎょりんをきらめかせてゐる。樹間には極楽鳥のつばさがひるがへり、芝生には白孔雀くじゃくが、尻尾しっぽをひろげて歩いてゐる。
わが心の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
これに対して武田勢は、先陣に小山田信茂おやまだのぶしげ山県昌景やまがたまさかげ内藤昌豊ないとうまさとよ小幡信貞おばたのぶさだら。だい二陣に馬場信春ばばのぶはる、武田勝頼かつよりら。信玄の本隊はその後づめとなり、魚鱗ぎょりんの陣形をもって南下しきたった。
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
雨に光沢を得た樹の葉がその灯の下で数知れない魚鱗ぎょりんのような光を放っていた。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
武蔵太郎は閃々せんせんとして、秋の水を潜る魚鱗ぎょりんのようにひらめく。
魚鱗ぎょりんのような閃光せんこうをえがいて飛んできた鎧通よろいどおしが、龍太郎の太刀たちにあたると同時に、銀粉ぎんぷんのふくろが切れたように、粉々こなごなとくだけ散って、あたりはにわかに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが、闇黒やみに、魚鱗ぎょりんのごとく閃めいて走った。同時に、長庵、すごい声でうめいていた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
とんぼぐみの隊伍は、そのまましずかに進んで、ころあいなところで、鳥雲ちょううんじんにくずれ、また魚鱗ぎょりんかたちにむすび、しきりと厳重げんじゅう陣立じんだてもうとくふうしているようすであったが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのなかに、刀影とうえい魚鱗ぎょりんのごとく微動していまだ鳴発しない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
葛飾かつしかの中川は、御留川おとめがわだった。いわゆる禁漁区域で、将軍家の御用網のほかは、打てないことになる。でこの川筋には、魚鱗ぎょりんの光りが押し合っている。これには、梅渓ばいけいも一口のって
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魚鱗ぎょりんを組んで、いっせいに押太鼓を打ちながら徳川陣の側へ迫って行った。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは木曾街道きそかいどう、東海道、北国街道ほっこくかいどう、三道のわかれ道で、いずれを取るもその人の心まかせ。伊那丸は三井寺山みいでらやまのふもとに立ち、魚鱗ぎょりん小波さざなみをたたえている琵琶びわのみずうみをながめながらかんがえた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新鮮な魚鱗ぎょりんもある。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)