駐屯ちゅうとん)” の例文
偶然にも、中尉テオデュールの属していた連隊がパリーに駐屯ちゅうとんすることとなった。その好機はジルノルマン伯母おばに第二の考案を与えた。
会桑二藩の兵の伏見に駐屯ちゅうとんするものを大阪に引揚げしめん事を説いたが、事既に遅く東西両軍の先鋒せんぽうは早くも砲火を交るに至った。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
明治三十八年三月五日の午前、当時全勝集ぜんしょうしゅう駐屯ちゅうとんしていた、A騎兵旅団きへいりょだんの参謀は、薄暗い司令部の一室に、二人の支那人を取り調べて居た。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一方、祝家荘しゅくかそうの入口に駐屯ちゅうとんしていた梁山泊軍七千の上も、暮天ぼてんようやくくらく、地には刀鎗とうそうの林を植えならべ、星は殺気に白くがれていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの難行軍をつづけてサンホセに入ったとき、南口付近はマニラから逃げて来た海軍部隊が駐屯ちゅうとんしていた。宇治は高熱のため当番兵のはからいで一軒の民屋に寝た。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
聯隊が駐屯ちゅうとんしている町も、病院がある丘も、後方の山にさえぎられて見えなかった。山の頂上を暫らく行くと、又、次の谷間へ下るようになっていた。谷間には沼があった。
雪のシベリア (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
英吉利イギリス仏蘭西フランス伊太利イタリア等の士官が数百人コンスタンチノープルに駐屯ちゅうとんしていたことがあり、彼等のうちには土耳古トルコの婦人を手に入れたと云って得意になった者も少くなかったが
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この中で、露国ろこくの船将が対馬尾崎浦つしまおざきうらに上陸し駐屯ちゅうとんしているとの報知しらせすら伝わった。港はとざせ、ヨーロッパ人は打ちはらえ、その排外の風がいたるところを吹きまくるばかりであった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
オランダに遊びに来ていた若い英国士官マクリイの軍服は、後年の「朝の眼マタ・アリ」には、十分貴族的に見えたかもしれない。一緒になるとすぐ、マクリイはインド駐屯ちゅうとん軍付きを命じられた。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「そうだ。われわれは、もうすでに、陸にぶつかっているのだ。これをどんどん進んでいくとうまくいけば、やがて、わが南極派遣隊の駐屯ちゅうとんしているところへ出られるかもしれないぞ」
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
町から三露里ばかりのところに龍騎兵りゅうきへいの連隊が駐屯ちゅうとんしていたのさ。
当時トウブチにいたオロシャの駐屯ちゅうとん部隊に、権判官はこちらから出向いて行った、当人は対等の儀礼をもって修好を申しこんだつもりではあったろうが、これが彼奴きゃつらめをつけあがらした第一の原因
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
洛内はもう鼻のさきに来ていたが、深草を過ぎたころからやたらに兵馬の駐屯ちゅうとんや行軍にあい、ければよけて行くさきが
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
衛舎には郊外の国民兵らが駐屯ちゅうとんしていた。衛兵らはしだいに注意を呼びさまされ、たたみ寝台の上に頭をもたげた。
いちど総退却した足利勢は、夜半からふたたび活動をおこし、全市の路地にくたくたとなって駐屯ちゅうとんしていた官軍へ逆襲さかよせをかけてきたのである。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
叉銃さじゅうや、動いてる銃剣や、駐屯ちゅうとんしている軍隊などが、そこに見えていた。しかし野次馬は一人もそれから先に出ていなかった。そこで交通がとだえていた。
孔明が軍馬を駐屯ちゅうとんした営塁えいるいのあとを見ると、井戸、かまど障壁しょうへき、下水などの設計は、実に、縄墨じょうぼくの法にかなって、規矩きく整然たるものであったという。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その他の軍隊は各兵営のうちに駐屯ちゅうとんしており、その上パリー近郊の各連隊が控えていた。不安な政府は、恐ろしい群集に対して、市中に二万四千の兵士と市外に三万の兵士とを配っていた。
登州守備隊から鄆州うんしゅう駐屯ちゅうとんへ移動を命じられた途中、なつかしさに、顔を見に立ち寄ったといって行けば、這奴しゃつ、必ず自分をよろこんで迎えるでしょう
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その後、蜀の大軍は、白帝城もあふるるばかり駐屯ちゅうとんしていたが、あえて発せず、おもむろに英気を練って、ひたすら南方と江北の動静をうかがっていた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀政の兵五千のほかに、麓の街道に駐屯ちゅうとんしていた小川佐平次祐忠すけただの一千も、ひとつになって狐塚の正面へ当った。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
およそどんな山間の田舎でも、軍の駐屯ちゅうとんと、そして兵糧徴発の輸送隊が道をうずめてないところはない。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なるほど、ひろい地域はせきとしたものだ。すぐ境内の検分に入って行く。およそ兵馬が駐屯ちゅうとんしたあとは乱脈なものだが、地に鳥影が映るほど、いちめん、きれいに清掃されてある。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
横山城は、前線の要地なので、特に、浅井、朝倉の抑えとして、藤吉郎の隊をめさせたものである。暫定的ざんていてき駐屯ちゅうとんの意味で命じたおぼえはあるが、城地をやると約束した記憶はない。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、折ふし松葉宿まつばのしゅく駐屯ちゅうとんしていた井伊兵部直政いいひょうぶなおまさだった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)