面汚つらよご)” の例文
お雪さん、捨てられたの何のってなきつらをしながら、かたきを討って下さいなんて、飛んでもないところへ泣きつくなんぞは、女の面汚つらよごし。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
相手は阿呆の田舎者である、勝ったところで名誉にならず、負けたらそれこそ面汚つらよごしだ。一向はえない試合だと思うと、ムシャクシャせざるを得なかった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
江戸の御用聞きの面汚つらよごしであると、頭から叱ってしまえばそれ迄であるが、先代の世話になった義理を思えば、なんとか彼を救ってやらなければならない。
半七捕物帳:64 廻り灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日頃「親の面汚つらよごし」のように言われている節子にも、その親のために役に立つ時が来た。年も暮れようとする頃に成って、突然義雄が重い眼病にかかったからで。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
巳之はあれから身を持ちくづして、泥棒、家後切、人殺しまでやるさうだ。言はゞ十二支組の面汚つらよごしさ。
だが、俺ひとりでは、淫売窟で袋叩きに会ったあの二の舞いをやらかしそうで、そうなると、俺がひとりで袋叩きになるのはいいが、それではこの場合、アナーキスト全体の面汚つらよごしになる。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
馬鹿ばかやつだ。華族の面汚つらよごしだ。」父はつばでも吐きかけるようにののしった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「金を拔いて娘をくれと拔かしやがつたな。手前てめえは江戸の巾着切の面汚つらよごしだ。辯天樣のやうな娘を、そんなモモンガアの餌にしてたまるものか。少しは目が覺めたか、馬鹿野郎ツ」
「はは、そのようなおどしを怖がる源三郎でない。夜昼となしに兄を誘い出して、あたら侍を腐らせた悪い友達に、何のとがで詫びようか。江戸の侍の面汚つらよごしめ。そっちから詫びをせねば堪忍ならぬわ」
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「金を抜いて娘をくれとかしやがったな。手前は江戸の巾着切りの面汚つらよごしだ。弁天様のような娘を、そんなモモンガアのえさにしてたまるものか。少しは目が覚めたか、馬鹿野郎ッ」