むつか)” の例文
こんなぽつちりした俸給では、定めし生活くらしむつかしからうといふ訳でもあるまいが、白堊館ホワイトハウスの家賃だけは、別に取立てない事にしてある。
フウ、『ナショナル』の『フォース』、『ナショナル』の『フォース』と言えば、なかなかむつかしい書物だ、男子でもよめない者は幾程いくらも有る。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
どんなにむつかしかつたことだらう! 子供は、感じることが出來ても、その感情を理解することが出來ない。
私も歩き出しながら、やっとその野薔薇の小さなしげみの前に達した。そうして今しがたその人のしていたようなむつかしい姿勢を真似まねながら、その上に身をこごめてみた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
口ではいえるが、またやさしいが、同時に、むつかしい。生きとし生けるものすべて、この問題を課せられている。その自覚もない者は、死をおそれぬのでなく、生もよく知らない人というほかはない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
完全かんぜんすことはよほどむつかしいのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ところが、その頃エシオピアにも学問好きの王様があつて、ひまさへあるとむつかしい問題を担ぎ出して来て、埃及王と智慧比べをしたものだ。
播磨はりまの伊藤といへば往時むかしからの百万長者、随分むつかしい家憲もあれば家風もある。気の毒にもそんななかに生れ落ちたのが今の伊藤長次郎氏。
渋沢だんが孔子を先生扱ひにするやうに、一体富豪かねもちすべて哲学者が好きらしい。何故といつて、孔子は色々むつかしい事を聴かせて呉れる上に滅多に金を
そして広い熊本でむつかしい、理窟つぽい事の解るのは、先づここに集まつた自分達だけだらうといつたやうな顔をした。
だが、実をいふと、そのお嬢さんは女学校で習つた物以外には、その後余りむつかしい書物ほんは読んでゐないらしかつた。
「忙しいといへば、宅の老人なども貧乏ひまなしで、とてもお望みにふ事はむつかしからうと思ひますよ。」
弟子はそれを聞いて、師僧の雑炊を拵へるのはなかなかむつかしいものだなと思つた。