阿蘭陀オランダ)” の例文
人の言うところには、丹後守は、弓馬刀槍きゅうばとうそうの武芸に精通し、和漢内外の書物を読みつくし、その上、近頃は阿蘭陀オランダの学問を調べていると。
そこで大船を求めしめた処が、丁度平戸沖に阿蘭陀オランダ船が碇泊しているのを知った。直ちに廻送せしめ、城へ石火矢いしびやを放たせた。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それだからこそ阿蘭陀オランダ部屋の中へ、織江を一人で監禁し、自分は主屋の一室で、今まで考え込んでいたのであった。しかし彼はこう思った。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼女は象や鶴やお猿を見たときとは、全然別な心からの愛をもって、そのお友達のような美しい阿蘭陀オランダ金魚の紅い尾やひれふるさまを眺めていた。
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)
顔もあなたはわたしの国のおん母麻利耶マリヤとは大違ひです。ましてあのかたを御覧なさい。成程なるほどあの方もこの国では、阿蘭陀オランダ人と云ふかも知れません。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
召しませぬか、さあさあ、これは阿蘭陀オランダトッピイ産の銀流し、何方どなたもお煙管きせるなり、おかんざしなり、真鍮しんちゅうあかがね、お試しなさい。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは調子なども洋画風に整頓せいとんした古い阿蘭陀オランダ派の油絵に似たものが多く、主として、風景、人物、風俗あるいは汽船とか、西洋名勝などがあります
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
ことに、阿蘭陀オランダ甚句の得わかぬ文句。テリガラフや築地の居留地や川蒸気などそんな時代の大津絵や。
随筆 寄席風俗 (新字新仮名) / 正岡容(著)
出島でじまに近い船繋場ふなつきばには、和船に混って黒塗三本マスト阿蘭陀オランダ船や、ともの上った寧波ニンパオ船が幾艘となく碇泊し、赤白青の阿蘭陀オランダの国旗や黄龍旗こうりゅうき飜々ひらひらと微風になびいている。
葡萄茶えびちや細格子ほそごうし縞御召しまおめし勝色裏かついろうらあはせを着て、羽織は小紋縮緬こもんちりめん一紋ひとつもん阿蘭陀オランダ模様の七糸しつちん袱紗帯ふくさおび金鎖子きんぐさりほそきを引入れて、なまめかしき友禅染の襦袢じゆばんそでして口元をぬぐひつつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
阿蘭陀オランダの通事たちに、シロオテの日本へ渡って来たわけを調べさせたけれど、シロオテの言葉が日本語のようではありながら発音やアクセントの違うせいか、エド、ナンガサキ、キリシタン
地球図 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いわく、〈近代阿蘭陀オランダの献る遍体黒白虎斑の馬あり、馬職に命じてこれを牧養せしむ、馬職これに乗りこれに載す、ともに尋常の馬に及ばず、ただ美色とうのみ、あるいは曰くの族なり云々〉と。
「但し、会所にて取扱ふ分は、し払代銀並びに代り品等滞るものこれ有りとも、同所にて償ひ阿蘭陀オランダ人に損失掛け間敷く、万一相対にて取計ひ損失相立つとも、会所にて差し構はず」(第七条但書)そのうえ
空罎 (新字新仮名) / 服部之総(著)
春日かすが太占ふとまにを調べるかたわらには阿蘭陀オランダの本を読み、いま易筮えきぜいを終って次に舶来はくらいの拳銃を取り出すという人であります。
伴天連ばてれん、さあ、婚礼はわたしがさせてもいが、——何しろ阿蘭陀オランダ生れだけに、あの女の横柄わうへいなのは評判だからね。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「その女を貝十郎より引き放し、阿蘭陀オランダ部屋へ閉じこめよ! 有無うむを申さば貝十郎を、飛び道具もて撃ってとれ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ことに、阿蘭陀オランダ甚句の得わかぬ文句、テリガラフや築地の居留地や川蒸気などそんな時代の大津絵や。
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)
またその蒐集しゅうしゅう穿鑿せんさくは近頃ぼつぼつ古いガラス絵や阿蘭陀オランダ伝来のビードロ絵を集める事もようやく流行して来たようでありますからその道の好事家こうずかにお願して置く事として
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
阿蘭陀オランダ料理は源内先生の最も好むところで、このような珍味を食い葡萄酒を飲みながら植物学者ヤコブスの如き高足こうそくと談笑することは、この世での最上の愉快とするのだが
屑屋はまた貴婦人を捕えて罵詈讒謗ばりざんぼう、「あ、あにおい咽返むせかえるようだ。」と鼻を突出してうそうそとぎ、「へん、むせも返るが呆れも返らあ、阿蘭陀オランダの金魚じゃねえが、香水の中で泳いでやあがる。 ...
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あの仁のことでございますから、美しい女子に阿蘭陀オランダ衣裳でも着せて、住まわせるのでござりましょうよ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一朶いちだ薔薇ばらの花を愛する唯の紅毛の女人である。見給へ。その女人の下にはかう云ふ金色の横文字さへある。ウイルヘルム煙草商会、アムステルダム。阿蘭陀オランダ……
商賈聖母 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
阿蘭陀オランダからか支那からかあるいは両方から入ったものか、私には今よくわかりませんが、何しろ輸入されてから、例えば当時の銅版や、油絵の如く、江漢こうかんとか、源内げんないとか
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
女は不相変あひかはらず勘定台の前に受取りか何か整理してゐる。かう云ふ店の光景はいつ見ても悪いものではない。何処か阿蘭陀オランダの風俗画じみた、もの静かな幸福に溢れてゐる。
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
阿蘭陀オランダ仕込みの西洋手品! 世間の奴らはこんなように云う。もっと馬鹿な奴は吉利支丹キリシタンだと云う。
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
阿蘭陀オランダ風の洋室であった。書棚に積まれた万巻の書、巨大なテーブルのその上には、精巧な地球儀が置いてあった。椅子の一つに腰かけているのが、例の鶴髪の老人であった。
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ああ云ふ作品は可笑をかしいかも知れない。しかしその可笑しいところに、く云へば阿蘭陀オランダ花瓶くわびんに似た、悪く云へばサムラヒ商会の輸出品に似た一種のシヤルムがひそんでゐる。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ユージェント・ルー・ビショット氏。阿蘭陀オランダより参った大画家じゃ」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
阿蘭陀オランダの女、(腹立たしげに)余計よけいな事は仰有おつしやらずに下さい。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)