はゞ)” の例文
そこに活々いき/\ひそやかに萠える感情は、彼の權力にもはゞまれず、彼の整然たる行軍の足下にも踏みひしがれることはないであらう。
その日は生憎の大夕立で出足をはゞまれ、平次とガラツ八が出動する頃になつて、殘る夕映の中に、漸く町々の興奮は蘇返よみがへつて行く樣子でした。
もしこの粗、穿うがつらぬくにいたらずば、必ず一の極限きはみあり、密こゝにこれをはゞみてそのさらに進むをゆるさじ 八五—八七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
こんなことでは世帯しよたいがもてないと、なかにたつて客をはゞみだしたのがむすこの桃華氏で、桃華氏が亡くなつてからは、その未亡人がこの役割を勤めてゐた。
なか等の親兵団は成らむと欲して成らなかつた。是は神田孝平、中井浩、横井平四郎等にはゞまれたのである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
嘗てその道をはゞんでいた浮世の義理やおきてなどは、今となっては全く除かれていたであろうし、ましてあまとなった母は、西坂本の敦忠の山荘のほとりにいおりを結んで暮らしていたので
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
感情の激昂げきかうから彼の胸は大波のやうに高低して、喉は笛のやうに鳴るかと思ふ程かわき果て、耳を聾返つんぼがへらすばかりな内部の噪音さうおんはゞまれて、子供の声などは一語も聞こえはしなかつた。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
それに行先をはゞまれたからと云つて、其儘歸つて來ては駄目だ、暗い穴が一層暗くなる許りだ。死か然らずんば前進、唯この二つの外に路が無い。前進が戰鬪だ。戰ふには元氣が無くちやかん。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そしてまたよろこびが苦痛にはゞまれて抑止された會合であつた。私は叫ばうとする聲を抑へ、急いで近づかうとする歩みを、抑制することは困難でなかつた。
勝造の暴言は、はゞみやうも無く、越前屋の店中に響き渡ります。
私には生れながらに持つてきた内心の寶がある。若し外から來る樂しみがはゞまれ、または私の出し得ないあたひでしか與へられないとしても、それは私の生命を續けさせることが出來る。