かく)” の例文
一面池になっている庭の景色丈けはかくの二階からゆっくりと見晴らした。雨上りの若葉がキラ/\と光っていてまぶしいほどだった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「それはまあしかたがない。こんな小さな家には、庵ぐらいがちょうどいいよ。かくとかそうとかでは大げさすぎる。はっはっ。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「余一の乗ってきたわしをうばって、監禁かんきんかくをやぶり、こよいのそうどうにまぎれてげのびようとしているらしい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
塚のうちには幾重いくちょうかくがあって、そのとびらはみな回転して開閉自在に作られていた。四方には車道が通じていて、その高さは騎馬の人も往来が出来るほどである。
初め鉢植にてありしを地にくだしてより俄に繁茂し、二十年の今日既に来青らいせいかく檐辺えんぺんに達して秋暑の夕よく斜陽の窓を射るを遮るに至れり。常磐木ときはぎにてその葉は黐木もちに似たり。
来青花 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
かくに座して遠きかわずをきく夜かな
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
浜松城はままつじょうのお使者番ししゃばんは、満天まんてんほしにくるまれたかく尖端せんたん擬宝珠ぎぼうしゅのそばで、手放てばなしに大声あげて泣いていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おお、してしてこのかく監禁かんきんしておいた咲耶子さくやこなる女をごぞんじないか、あれをにがしては一大事だから
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、本丸のかくへ向って、こう独り言に頭を下げ、また城中五百の将士に、心のうちで別れを告げた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やかたは、中央の大きな母屋おもや寝殿しんでんとよび、また渡殿わたどのという長い廻廊かいろうづたいに、東と西とに対ノ屋が、わかれていた。そのほか、泉殿いずみどのとか、つり殿とかも、すべて中心のかくをめぐっている。
かくに閣を重ねた梁山泊のいわば本丸。そこを“聚議庁しゅうぎちょう”とよんでいる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なに、なに。いま申した魔耶殿まやでんとは、いったい、どこのかくか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)