間中あいだじゅう)” の例文
この間中あいだじゅう、利根川の汎濫したため埼玉栃木の方面のみならず、東京市川の間さえ二、三日交通が途絶えていたので、線路の修復と共に
買出し (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いいお天気で、からりと日が照っていたから、この間中あいだじゅう湿気払しっけばらいだと見えて、本堂も廊下ろうかも明っ放し……でだれも居ない。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今度の計画は、一ヶ月間十勝にステーションを置いて、教室の人たちが代る代るにやって来て、その間中あいだじゅう雪の結晶の連続観測をしようというのである。
雪後記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
自分はこの影と稲妻とをつづり合せて、もしや兄がこの間中あいだじゅう癇癖かんぺきこうじたあげく、嫂に対して今までにない手荒な事でもしたのではなかろうかと考えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
孝「殿様には此の間中あいだじゅう御不快でございましたそうで、お案じ申上げましたが、さしたる事もございませんか」
それのみか、仙岩の領内を通る間中あいだじゅう、死の危険を感じなくてはならなかった。緒についたばかりのダルメイダの島原半島布教も、一頓挫を来たしたように見えた。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
複雑な変装をしている間中あいだじゅう富美子の父がそれに気がつかなかったりするところなどはその一例である。
後生ごしょうは見て来んことじゃから、それはおってのこと、こうひもじゅうては、眼が舞いそうじゃ、そのうえ、この間中あいだじゅうの談議ごとに、大難に逢うときは、百味ひゃくみ御食おんじきをくだされて
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼女はそう云ってる間中あいだじゅう、ただの一度も私をまともに見ようともせず、また彼女の声の調子は、不断とはまるきり違っておりました。私には彼女が嘘をついてると云うことがはっきり分りました。
黄色な顔 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
この間中あいだじゅうは見るからに、万紅ばんこうを大地に吹いて、吹かれたるものの地に届かざるうちに、こずえから後を追うて落ちて来た。忙がしい吹雪ふぶきはいつか尽きて、今は残る樹頭に嵐もようやくおさまった。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は取り散らした書物の間にすわって、心細そうな父の態度と言葉とを、幾度いくたびか繰り返し眺めた。私はその時またせみの声を聞いた。その声はこの間中あいだじゅう聞いたのと違って、つくつく法師ぼうしの声であった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あのこの間中あいだじゅう当人がしきりに書いていた本はどうなりました」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)