金鞍きんあん)” の例文
同時に——造営の事も終りぬれば——とあって、諸州の大将、文武の百官も、祝賀の大宴に招かれて、鄴城の春は車駕しゃが金鞍きんあんに埋められた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幡旗はんきに埋められて行く車蓋しゃがい白馬はくば金鞍きんあんの親衛隊、数千兵のほこの光など、威風は道をはらい、その美しさは眼もくらむばかりだった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「む。同門の友がそう朝廷の禁軍に臨み、白馬はくば金鞍きんあんを並べるなどの日がもしあったら、そいつあ、どんなに愉快だろうな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち閉じたる城門を開け放ち、姜維は銀鎧ぎんがい金鞍きんあんという武者振りに、丹槍たんそうの長きを横にかかえ、手兵二千に、鼕々とうとうと陣歌を揚げさせて、城外へ出た。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、貂蝉をしかと抱いて、乱軍の中を馳け出し、自分の金鞍きんあんに乗せて、一べん、長安へ帰って来た。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まぎれもない金鞍きんあんを乗せた馬の背と、その馬の背を降りて、みずから口輪をつかんで曳いてゆく白地の陣羽織の武者が——よしのうちに影を沈めながら、しかも極めて悠々と
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「むかし、都にあって、共に、青春の少年であった時代は、よく書を論じ、家を出ては、白馬金鞍きんあん、花を尋ねて遊んだこともあったが、そのあなたも、はや、中老になられたか」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は金鞍きんあんの上にあり、これは氷上にぬかずいているが、ここにある階級の別こそ、却って民の大安心であった。国主と民の二者に、何の対立なく、民の心は国主であり、国主の心は民だった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……や。林師範だぞ」「豹子頭ひょうしとうか」と、小声をかわしていたと思うと、たちまち、どどどっと階段を降りて、高御曹司を、白馬はくば金鞍きんあんの上にほうじ、まるで落花を捲いたほこりのように逃げ去った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、目礼もくれいをして、まッ先に、白駒しろこま金鞍きんあんにヒラリと乗る。つづいて忍剣にんけん龍太郎りゅうたろう、波に月兎げっとくらをおいた黒鹿毛くろかげの背へヒラリとまたがって、キッと手綱たづなをしぼり、たがいにあいかえりみながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
珠玉、金銀、織物、陶器、犀角さいかく玳瑁たいまい翡翠ひすい珊瑚さんご孔雀くじゃく闘鴨とうおう鳴鶏めいけい、世の七宝百珍にあらざる物はない。そしてそれは金鞍きんあんの白馬百頭の背に美しく積まれて、江岸の客船まで送りとどけられた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廻廊の下には、日ごろ見覚えのある白馬に見事な金鞍きんあんがすえてある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)