透徹とうてつ)” の例文
河内房了海は、さすが大円房の四天王随一と云われた人物だけあって、あらゆる行法にけ、殊に人物をるにかけては透徹とうてつの眼識をそなえていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毎日まいにち透徹とうてつしたそらをぢり/\ときしりながら高熱かうねつ放射はうしやしつゝあつたあまりにながひる時間じかんまうとして、そらからさうして地上ちじやうすべてがやうや變調へんてうていした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
病み果てた病人のように透徹とうてつした頭脳であわただしく過ぎて行った赤い歴史をめくるのであった。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
太古のような静けさの底に、瑠璃の如く透徹とうてつした泉の水がよどんで居るのです。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
余りに幼稚なるお芝居気に富んでいる事である。寸毫すんごうの微といえども逃すことのない透徹とうてつその比を見ざる大学者の頭脳と、此度の所謂犯罪事実なるものとを比較する時吾人ごじん如何いかんの感があるか。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
仏像の眼を思わせるようなその慈眼じがんと、清潔であたたかい血の色を浮かしたその豊頬ほうきょうとに、まず心をひきつけられ、さらに、透徹とうてつした理知と燃えるような情熱とによって語られるその言々句々げんげんくく
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
要するに理想の実現は位地によるものでない、心の底まで理想が透徹とうてつするならば、なにごとにあたっても実現すると思う。一杯の茶を飲もうが、一言の話をしようが、そのなかに理想が実現せられる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
大根だいこんは、一たん地上ちじやうみどりうばうて透徹とうてつしたそら濃厚のうこうみどり沈澱ちんでんさせて地上ちじやういた結晶體けつしやうたいでなければならぬ。晩秋ばんしう只管ひたすらしづまうとのみしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)