踏抜ふみぬ)” の例文
旧字:踏拔
群集に押しもまれながらけ歩いているうち、いつか足袋たびはだしになったため踏抜ふみぬきをして、その日の暮れ近く人にたすけられてやっと家へ帰って来た。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
堂は形だけ残っておりますけれども、勿体もったいないほど大破たいはいたして、そっと参ってもゆかなぞずぶずぶと踏抜ふみぬきますわ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかもその当座は草鞋わらじがなお用いられて、禁令は単に踏抜ふみぬきを予防するにすぎなかったが、もう今日ではことごとくゴム靴だ。そうでなければゴム底の足袋たびをはいている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この大事な留学生にかえって鉄砲をかつげなんて、ソンな不似合な事をするには及ばぬ、仮令たとい弾丸にあたらないでも、足に踏抜ふみぬきしても損だ、構うことはない病気といっことわっ仕舞しまえ、一人もかえさない
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)