賞讃しょうさん)” の例文
それに、彼が出あわなければならない恐ろしい敵軍は、血と肉とをもった人間、すなわち、彼女を賞讃しょうさんするあまたの農村の男たちだった。
一世の尊崇を集めた大詩人ゲーテにって、その賞讃しょうさんの言葉を浴び、当時の大ピアニストなるモシェレスに逢って親交を結び
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
ヒラメならぬマグロの刺身に、ごちそうの主人あるじみずから感服し、賞讃しょうさんし、ぼんやりしている居候にも少しくお酒をすすめ
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ヴェルハアレンはフランドルの美術に現れし裸体の婦女によりて偉大なる人間の活力を想像し賞讃しょうさんく能はざりしなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこには評判のいいおとなしい詩人が、招待されたすべての客から賞讃しょうさんされてすわっていました。この人はしあわせでした。
現代人にとっては、こうした知的動きは賞讃しょうさんさるべきものらしいが、僕にとっては「罪」なのだ。比較癖とともにいつも自分を苦しめるのである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
こういって、やおら席につくと、われるような拍手はくしゅが起こって、人々は口々に、その紳士の機知きち賞讃しょうさんしました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
モーニングを着た小山男爵だんしゃくは、自分の見識に対する夫人の賞讃しょうさんを期待しているように、自信にちて云った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そして、まず、田沼理事長と朝倉塾長の青年教育に対する努力を、ありふれた形容詞をまじえて賞讃しょうさんした。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
われ人共に、すぐれた訳詩だと賞讃しょうさんしたものであるが、翻訳技術の巧みな事は勿論ながら、其所には原詩の色も香も、すっかり日本化せられて残ったうらみが深い。
詩語としての日本語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
が、それでもまだまゆの間には、いくぶんか私の賞讃しょうさんに、不満らしい気色けしきが見えたものです。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
宗教人の名において、菩薩の名において、彼を賞讃しょうさんし、景仰すべきであると思います。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
一同はなんでもでも、それを突きとめて、課長の賞讃しょうさんにあずかりたいものと考えた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
検分の四名はあまりのみごとさ、すさまじさに賞讃しょうさんの言葉も忘れ、しばらくは茫然と馬上にたたずんでいた。……三之丞が復命に帰城したとき、光政はなつから聞いたことはなにも云わず
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
兵部卿の宮の詩が、ことに傑作であったと人々の賞讃しょうさんするのも宮にはうれしいことともお思われにならない。詩作などがどんな気でできたのであろうとぼんやりしておいでになるのである。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
群集ぐんしゅう正直しょうじきにドッと賞讃しょうさんの手をはやした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここでいつも彼を取りまき、賞讃しょうさんするのは、大ぜいの馬丁や、厩番うまやばんや、靴磨きや、名もない居候いそうろう連中である。
駅馬車 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
指揮者も合唱者達も非常に驚いたが、その巧みな独唱に圧倒されて心からの賞讃しょうさんを送り、お陰様でハイドンは、ひさしぶりの御馳走ごちそうにありついて、たらふく詰めこむことができた。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
わたしはヴォルテェルを軽蔑けいべつしている。若し理性に終始するとすれば、我我は我我の存在に満腔まんこう呪咀じゅそを加えなければならぬ。しかし世界の賞讃しょうさんに酔った Candide の作者の幸福さは!
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
老人の死躰はもっと遠くまで流されたのだろう、まだどこからもみつかった知らせはないけれども、六がその老人を救おうとしたという話は、寄場ぜんたいに大きな驚きと賞讃しょうさんを呼びおこした。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
瑠璃子夫人は、心から感心したように、賞讃しょうさんの微笑を信一郎に注いだ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かつては全世界の尊敬と賞讃しょうさんとをいく世にもわたってかちえようと大志をいだいた人でも、その名を忘却から救えるのは、ほんの短い数年のあいだだけなのだ。
思わずあげた賞讃しょうさんの声に
半化け又平 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼は黒人たちの賞讃しょうさんの的になった。