さいな)” の例文
親の前でこそ蛤貝はまぐりがい反身そっくりかえれ、他人の前では蜆貝しじみがいと縮まるお勢の事ゆえ、さいなまれるのが辛らさにこの女丈夫に取入ッて卑屈を働らく。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
中村と一緒に生活していた間に私の最も悲しかったことはしかし、中村に苛められさいなまれたことではない。それは弟とわかれたことであった。
豊雄、刀自とじにむかひて、兄の見とがめ給はずとも、みそかに姉君を一五三かたらひてんと思ひ設けつるに、一五四はやさいなまるる事よ。
られたり、後足で砂をかけられたり、いじめられてさいなまれて、煮湯にえゆを飲ませられて、砂をあびせられて、むちうたれて、朝から晩まで泣通しで、咽喉のどがかれて、血を吐いて
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひとまれたり、られたり、後足うしろあしすなをかけられたり、いぢめられてさいなまれて、熱湯にえゆませられて、すなあびせられて、むちうたれて、あさからばんまで泣通なきどほしで、咽喉のどがかれて、いて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
武士らこれをとりもたせて、怪しかりつる事どもをつばらに訴ふ。助も大宮司も妖怪もののけのなせる事をさとりて、豊雄をさいなむ事をゆるくす。されど二〇九当罪おもてつみまぬがれず、かみみたちにわたされて牢裏らうりつながる。