蠢々しゅんしゅん)” の例文
蠢々しゅんしゅんとして、哀々として、莞爾かんじとして、突兀とっこつとして、二人三人五人の青年たちがむくりむくりと起き上って来た。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
地の底とは思われない広い部屋に、大勢の黒いかたまり累々るいるいと、また蠢々しゅんしゅんと、動きまわり、かたまり合っているところ、実に浮世離れのしたながめであった。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかしてまた浩さんの運命である。蠢々しゅんしゅんとして御玉杓子おたまじゃくしのごとく動いていたものは突然とこの底のないあなのうちに落ちて、浮世の表面からやみうちに消えてしまった。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
菓子屋が来るではないから節倹は思うままに出来る、汽車が通って石炭臭い処に蠢々しゅんしゅんしていないで、こんな処で暢気のんきに生活しようとする哲人が農家に尠ないものと見える
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
病躯蠢々しゅんしゅん命、旦夕たんせきを測られざる者あに手を拱して四十歳を待たんや。独り文学はしからず。四十歳を待たず、三十歳を待たず。二十歳にして不朽の傑作を得る者古来の大家往々にして然り。
病牀譫語 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
世の風声をわきまえず。闇々たる石窟に蠢々しゅんしゅんとして動き、食満々と与えざれば、身心髐骨きょうこつと衰えたり。国のため捨つるこの身は富士の根の富士の根の雪にかばねを埋むとも何か恨みむ今はただ。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
曰く、『昼もまた知らざるところありや』と。先生曰く、『なんじよく昼の懵々ぼうぼうとしてき、蠢々しゅんしゅんとして食するを知るのみ。行いて著しからず、習いてつまびらかならず、終日昏々こんこんとして、ただこれ夢の昼なり。 ...
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)