薪割まきわり)” の例文
ただ食物ばかりを西洋流に真似て好き品を用い、その他は一切いっさいむかしの田舎士族に復古して、ソレから運動には例の米搗こめつき薪割まきわりに身を入れて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
薪割まきわりが姉さんの肩をかすつて水へ落ちたので、總立ちになつて大騷ぎをしたのと、喜三郎どんが重箱を背負しよつて船へ飛込んだのと一緒でした。
むしろのうえに、薪割まきわりなたが一ちょう見える。それと、読み飽かれたかたちの書物が一冊、人間がひとり、膝を抱えていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何某(五三)さんは自宅六畳間で次男何某(一八)君の頭を薪割まきわりで一撃して殺害、自分はハサミでのどを突いたが死に切れず附近の医院に収容したが危篤きとく
桜桃 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その間、「由」は下男の吉蔵が焚火たきびをして居る内庭へ薪割まきわり台など運んで来て腰をかけてあたたまって居る、膝に黒の碁盤縞ごばんじまの俥の前掛の毛布を、きちんと畳んで置いたりして。
かやの生立 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
わくに縛りつけられて、ヒンヒン鳴いている奴を、薪割まきわりのようなやつで、ひたいを一つガンとくらわせると、ころりっと参ってしまいまさあ、それを骨切りのこぎりで、ごそごそっと首を引けば
首を失った蜻蛉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
肉屋の亭主は板塀に立て掛けてあった大鉞おおまさかりを取って私に示した。薪割まきわりを見るような道具だ。一方に五六寸ほどのとがった鉄管が附けてある。その柄には乾いた牛の血が附着していた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
藁草履わらぞうり穿いてじんじん端折ばしょりをして庭へ下りましたが、和尚様のじんじん端折は、丸帯まるぐけの間へすそを上からはさんで、後鉢巻うしろはちまきをして、本堂の裏の物置から薪割まきわりの長いのを持って来て
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「役割だか薪割まきわりだか知らねえが、あんまりふざけた野郎だ」
「ところで、あの日、薪割まきわりを投つてから、喜三郎が雪見船へ來るまでの間はどれくらゐかゝつて居るんだ」
喜三郎は氣が弱かつたが、惡人ぢやない。惡いのは主人の金兵衞と、國松だよ。雪見船に薪割まきわり