薄萌黄うすもえぎ)” の例文
五つぎぬ上衣うわぎ青海波せいがいはに色鳥の美しい彩色つくりえを置いたのを着て、又その上には薄萌黄うすもえぎ地に濃緑こみどりの玉藻をぬい出した唐衣からごろもをかさねていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
馬の沓形くつがたの畠やや中窪なかくぼなのが一面、青麦に菜を添え、紫雲英をくろに敷いている。……真向うは、この辺一帯に赤土山のげた中に、ひとり薄萌黄うすもえぎに包まれた、土佐絵に似た峰である。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
陸奥みちのく信夫摺しのぶずりのような模様を白く染め出した薄萌黄うすもえぎ地の小振袖を着て、やはり素足に藁草履をはいていたというだけを、しるすにとどめて置きたい。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
苦痛の顔の、醜さを隠そうと、裏も表も同じ雪の、厚く、重い、外套がいとうの袖をかぶると、また青い火の影に、紫陽花の花に包まれますようで、且つ白羽二重の裏に薄萌黄うすもえぎがすッととおるようでした。
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
苦痛くつうかほの、みにくさをかくさうと、うらおもておなゆきの、あつく、おもい、外套ぐわいたうそでかぶると、またあをかげに、紫陽花あぢさゐはなつゝまれますやうで、白羽二重しろはぶたへうら薄萌黄うすもえぎがすツととほるやうでした。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)