草鞋掛わらじがけ)” の例文
知らない旅客、荷をしょった商人あきんど草鞋掛わらじがけに紋附羽織を着た男などが此方こちらのぞき込んでは日のあたった往来を通り過ぎた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
難儀だって程度問題、覚悟をしての草鞋掛わらじがけででもあれば格別、何しろ湯あがりのぶらぶら歩き。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私達は草鞋掛わらじがけのまま炉辺で足を休めた。細君が辣韮らっきょう塩漬しおづけにしたのと、茶を出して勧めてくれた。かわいた私達の口には小屋で飲んだ茶がウマかった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見たていは、せた尻切しりきりの茶の筒袖つつッぽを着て、袖を合わせて、手をこまぬき、紺の脚絆穿きゃはんばき草鞋掛わらじがけの細い脚を、車の裏へ、蹈揃ふみそろえて、と伸ばした、抜衣紋ぬきえもん手拭てぬぐいを巻いたので、襟も隠れて見分けは附かぬ。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)