花莚はなむしろ)” の例文
鉄さんは景気よく根太のつくろいをして、戸棚の中に敷いていた花莚はなむしろをおき、松さんは膝掛ひざかけを敷いて祖母とあたしのいるところをつくった。
八月のさかりに風通しの好いところへ花莚はなむしろを敷いて、薄化粧でもして、サッパリとした物を着ながらひとりで寝転ねころんで見たなんて——私はそういう人が面白いと思います
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この県で力を入れたものに「花莚はなむしろ」があります。浅口郡西阿知にしあちが本場であります。いろどりと模様のある茣蓙ござで、いぐさくきを材料にしたものであります。織方おりかたで色々なしまを出します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その無花果の木かげに花莚はなむしろだけは前と同じように敷かせて、一人で寝そべりながら、そんな実の出来工合なんぞ見上げていたが、ときどき思い出したようにび起きて、見真似みまね
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
稚兒おさなごはゝよぶやうさしまねぎつ、坐敷ざしきにもらではるかにてば、松野まつのおもかろにあゆみをすゝめて、はや竹椽ちくえんのもとに一揖いつしふするを、糸子いとこかるくけて莞爾にこやかに、花莚はなむしろなかばけつゝ團扇うちわつてかぜおくれば
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
庭の無花果いちじくの木かげに一枚の花莚はなむしろを敷いて、その上でそれ等の赤まんまの花なんぞでままごとをしながら、肢体したいに殆どじかに感じていた土の凹凸おうとつや、何んともいえない土のやわらか味のある一種の弾性や
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)