おゆ)” の例文
当麻真人家の氏神当麻津たぎまつ彦の社には、祭り時に外れた昨今、急に氏の上の拝礼があつた。故上総守おゆ真人以来、暫らく絶えて居たことであつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
おゆが普通の使者でなくもっと中皇命との関係の深いことを示すので、特にその名を書いたと見れば解釈がつき、必ずしも作者とせずとも済むのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
しぎにありては百羽掻也もゝはがきなり、僕にありては百端書也もゝはがきなりつきのこんの寝覚ねざめのそらおゆれば人の洒落しやれもさびしきものと存候ぞんじさふらふぼく昨今さくこん境遇きやうぐうにては、御加勢ごかせいと申す程の事もなりかねさふらへども
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
子の生長そだちにその身のおゆるを忘れて春を送り秋を迎える内、文三の十四という春、まちに待た卒業も首尾よく済だのでヤレ嬉しやという間もなく、父親は不図感染した風邪ふうじゃから余病を引出し
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そはわれおゆるに從つて泣かんとする事の漸く稀なるを。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
太宰少弐小野老朝臣だざいのしょうにおぬのおゆのあそみの歌である。おゆは天平十年(続紀には九年)に太宰大弐だざいのだいにとしてそっしたが、作歌当時は大伴旅人が太宰帥だざいのそちであった頃その部下にいたのであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)