老樹おいき)” の例文
土地の口碑こうひ、伝うる処に因れば、総曲輪のかのえのきは、稗史はいしが語る、佐々成政さっさなりまさがその愛妾あいしょう、早百合を枝に懸けて惨殺した、三百年の老樹おいきの由。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女かれが若かりし春の面影は、おそらく花のようにも美しかったであろうと想像されるが、冬の老樹おいきの枯れ朽ちたる今の姿は、ただ凄愴ものすごいものに見られた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
時をおき老樹おいきのしづく落つるごと靜けき酒は朝にこそあれ
一本の柿、三本の栗、老樹おいきの桃もあちこちに、夕暮を涼みながら、我を迎うる風情にたたずむ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
岸にはおしならべて柳の樹植えられたり。若樹のこずえより、老樹おいきに、居所いどころかわるがわる、月の形かからむとして、動くにや、風のぎたる柳の枝、下垂れて流れの上にゆらめきぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)