羽叩はばた)” の例文
この時、はたはたと聞き慣れぬ鳥の羽叩はばたきの音がした。振り向くと、赤い毛に紫の交った大きな鳥が二羽、高い木の上に巣を作っていた。
森の暗き夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小説家の友人は、この機会をはづさないで、作家と本屋とを結びつけようと考へたので、あらかじめその由を通じると、本屋は雀のやうに羽叩はばたきをして喜んだ。
霧をとおした朝日の光りを区切ったために、七色の虹となって浮き立ちながら花壇の上で羽叩はばたく鶴の胸毛をだんだんにその横から現してゆくのが映っていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
せばいへうち羽叩はばたにはとりこゑがけたゝましくみゝそこひゞいた。おつぎはまだすや/\としてねむつてる。隙間すきままぶたひらいたやうにあかるくなつたときにはとり甲走かんばしつていた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
お宮の松にはふくろうんでいたのじゃがと、その不気味ぶきみな鳴声を思いだしながら、暗いこずえを見上げていると、その木蔭から一羽の鳥が羽叩はばたきして空を横切っているような気がした。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
あたかも籠の禽が俄に放されて九天に飛ばんとして羽叩はばたきするような大元気となった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
奇怪な叫声さけびごえと共に凄じい羽叩はばたきをする。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
けれど、その声は空しく木精こだまに響いたばかりだ。魂消たまげたものかパタパタと鳥の羽叩はばたきしたのが聞えた。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)