納涼すずみ)” の例文
それは春のことで。夏になると納涼すずみだといって人が出る。秋は蕈狩たけがりに出懸けて来る、遊山ゆさんをするのが、みんな内の橋を通らねばならない。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
納涼すずみに行く振りをして表へ飛び出し、彼のあとをつけて含満ヶ渕まで行くと、磯貝は誰やらとしきりに言い争っている様子なり。
慈悲心鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
夕飯が済むか済まないに、もう納涼すずみがてらの客がどかどか入込んで来る。一しきり客の出さかる頃は、廻廊のように造られた伊勢崎屋の店の内が熱い人の息で満たされる。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ところがチャント門限があって出ることが出来ぬから、当直の門番を脅迫して無理にけさして、鍋島なべしまの浜と云う納涼すずみ葭簀張よしずばりで、不味まずいけれども芋蛸汁いもだこじるか何かで安い酒をのん
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わたしが、父と一緒に四谷よつや納涼すずみながら散歩にゆくと、秋の初めの涼しい夜で、四谷伝馬町よつやてんまちょうの通りには幾軒の露店よみせが出ていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
成程なるほど、島を越した向う岸のはぎの根に、一人乗るほどの小船こぶねが見える。中洲なかずの島で、納涼すずみながら酒宴をする時、母屋おもやから料理を運ぶ通船かよいぶねである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なつになると納涼すずみだといつてひとる、あき茸狩たけがり出懸でかけてる、遊山ゆさんをするのが、みんなうちはしとほらねばならない。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これもそれと似寄によりの話で、やはり十七年の秋と思う。わたしが父と一所いっしよに四谷へ納涼すずみながら散歩にゆくと、秋の初めの涼しい夜で、四谷伝馬町てんまちょうの通りには幾軒の露店よみせが出ていた。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今日きょうも朝から一日奔走かけあるいたので、すっかりくたびれてしまって、晩方一風呂ひとっぷろはいったところが、暑くて寝られんから、ぶらぶら納涼すずみに出掛けて、ここで月をていたうちに
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中洲の島で、納涼すずみながら酒宴をする時、母屋おもやから料理を運ぶ通船かよいぶねである。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)