端近はしちか)” の例文
「阿波殿、少し酔ってまいられたかな?」と三位有村は、に落ちない顔をして小鼓こつづみを片寄せたが、ほかの三卿は、血を見ることを珍しげに端近はしちかしとねを進めた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの児さんが捨子じゃそうな。大分大きくなったものだ。」などと人にまじって端近はしちかく立働いているその児を見て評するというような句と解する方が至当であろう。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
言はるるままに客間に通りて、端近はしちかう控ふれば、彼ははたなりしをんなを呼立てて、速々そくそくあるじかたへ走らせつ。莨盆たばこぼんいだし、番茶をいだせしのみにて、納戸なんどに入りける妻は再びきたらず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
くませんとなし其せつに此眞向まむかひの棟割長家むねわりながや建續たてつゞけたる其中にも一そうきたな荒果あれはていと小狹せうけふなる家の中に五十四五なる老人一個ひとり障子一枚押開おしひら端近はしちかふ出物の本を繰廣くりひろげ見てゐたりしが今長三郎が手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
上田周防すはうの義隣よしちか殿町奉行中山出雲守殿大岡越前守殿公事方勘定くじかたかんぢやう奉行駒木根こまぎね肥後ひごの守殿かけひ播磨はりまの守殿御目付杉浦貞右衞門殿浦井權九郎殿出座あり大岡殿正面端近はしちかく進み出られ右の方に中山殿其の右に大目付御目付立合たり其外勘定吟味役衆祐筆いうひつ衆勘定衆兩支配勘定に至るまで公事くじ立合の役々出席あり此時大岡越前守殿本多長門守家來松本理左衞門と呼れ其方儀は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)