空間あきま)” の例文
○家が焼けてから諸処方々人の家の空間あきまをさがして仮寐かりねの夢を結ぶようになって、ここに再び日本在来の家の不便を知るようになった。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
満員でないまでもその空間あきまというのは到底、この乗物の客を満足させることができないものばかりでしたから、さてここへ来て途方に暮れ
「東京に踏みとどまって仕事をさがしますが、丁度Hさんが御自分のアパートに空間あきまがあるからと教えてくれましたので」
夜のものなどの一向手薄なそこの家に、落着きのない一晩があけると、その午後浅井はつい近所に、当分お増を置くような下宿の空間あきまを探しに出た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
桂子と卯ノ丸との間をへだて、卯ノ丸と浮藻との間を充たし、一寸の隙も一分の空間あきまも、この地上には見られなかった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ぷんと薬の香のするへや空間あきま顫動せんどうさせつつつたわって、雛の全身にさっと流込むように、その一個々々が活きて見える……
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
正直に言うと、わたしどもの白苫しろとまの船は黒苫くろとまの船の側へくのはいやなんだ。まして空間あきまがないのだから。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
すると彼は、やっと安心した様に、私の隣のわずかばかりのベンチの空間あきまを目がけて近づいて来るのです。
モノグラム (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
藤吉郎の場合は、たいがいとりでの奥のいちばん広い座敷を——がらんと空間あきまにさせておいて、広縁のはしへしとねを運ばせ、それへあぐらをくんで、ぽつねんと陽なたぼっこをしているような折が多い。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父もまた新聞屋だの書記だの小使だのと、つまらん職業に我がの名前を出されてはかえって一家の名誉に関する。いえには幸い空間あきまもある食物もある。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「階下だって……君のうちでも、この間、僕が、あの空間あきまを通った時、吃驚びっくりしたものがあったじゃないか。」
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
船はここまで来ると、ゆっくり漕ぎ出して、だんだん側に近づいてみると果たして空間あきまがなかった。みんなが棹をおろしたところは、舞台の正面からはずいぶん離れていた。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
階下しただつて……きみうちでも、あひだぼくが、あの空間あきまとほつたとき吃驚びつくりしたものがあつたぢやないか。」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二階の空間あきまを密会所にしてから、早くも三ヶ月近くなつた。梅雨は既に過ぎて四五日たてば盆である。白井は机に背をよせかけ、両足を投出した膝の上に常子を抱きながら
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
空間あきまは勘定の中に入れない。お前、見たろう。乃公おれがあの白話詩はくわしを作った時、空間あきまがどのくらいあったか。おそらく一冊書いて三百文くらいのものだ。印税は半年経っても音沙汰がない。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「前の方に空間あきまがないから俺達は遠くの方で見よう」と阿發が言った。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)