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真摯
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しんし
ふりがな文庫
“
真摯
(
しんし
)” の例文
旧字:
眞摯
これを内より見れば、
真摯
(
しんし
)
なる要求の満足、即ち意識統一であって、その極は自他相忘れ、主客相没するという所に到らねばならぬ。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
次にイエスが腸をしぼって「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ」と叫ばれた
真摯
(
しんし
)
悲痛の声が、奇妙に彼の良心を圧したのでしょう。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
「今、あなたの
真摯
(
しんし
)
な述懐を聞く途端に、私の頭へ閃めいたものがあります。それは、きっとあなたに何らかの光明を与えると思う」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の人となりは含蓄の多い
床
(
ゆか
)
しい感じを人に与えるが、
真摯
(
しんし
)
な静かな性格の反面には常に愛すべきユーモアがあったということである。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
自分で真面目だと信じていた動機でさえ、必竟は自分の未来を救う手段である。平岡から見れば、
固
(
もと
)
より
真摯
(
しんし
)
なものとは云えなかった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
清廉、
真摯
(
しんし
)
、誠直、確信、義務の感などは、悪用せらるる時には
嫌悪
(
けんお
)
すべきものとなるが、しかしなおそれでも壮大さを失わない。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
僕の記憶にして誤りがなければ、氏の説を吟味しその
真摯
(
しんし
)
さに静かに敬礼した人は、意外にも小林秀雄氏一人あるのみであった。
翻訳遅疑の説
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
一昨日の朝、津田が面会したときのこと、榎本は話の途中でにわかに
真摯
(
しんし
)
な顔付をして、卒然とこえをひそめて辞意を洩らした。
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
ただ一人ミケランジェロにたいしては、その悲壮な
苦悶
(
くもん
)
や崇高な
蔑視
(
べっし
)
や貞節な情熱の
真摯
(
しんし
)
さなどのために、彼もひそかに敬意をいだいた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
若
(
も
)
しその任務たる国防を全うするをえない事情にあるならば、
真摯
(
しんし
)
にその旨を訴えるべき他の適当の方法がある
筈
(
はず
)
である。
二・二六事件に就て
(新字新仮名)
/
河合栄治郎
(著)
そこにおける
真摯
(
しんし
)
な御思索がそのあたりのすべてのものにまで
知
(
し
)
らず
識
(
し
)
らずのうちに深い感化を与え出していたようなことがあるかも知れない。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そして
縷々
(
るる
)
として霊の恋愛、肉の恋愛、恋愛と人生との関係、教育ある新しい女の
当
(
まさ
)
に守るべきことなどに就いて、切実にかつ
真摯
(
しんし
)
に教訓した。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
私はこの
真摯
(
しんし
)
な青年の私に対する信頼に対して、もはや充分了解が出来ても、何か一言
詰
(
なじ
)
らないではいられない、やや皮肉らしい気持ちで云った。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
真摯
(
しんし
)
な人心、進歩的な態度——約束されている、フィンランドの将来には何かしら健全で清新なものが——気がする。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
何故彼が美術論者より転じて社会論者として
起
(
た
)
つに至ったか。そこには必然な径路があった。彼の経済学は、美に対する彼の
真摯
(
しんし
)
な要求より発した。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
で、彼は自分が、他にとって、決して
真摯
(
しんし
)
な愛に相当しないことをさとって、自らもジョーカーとなったのである。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
というと熱血誠心、
真摯
(
しんし
)
真剣ではありながら、彦九郎流の一徹短慮、思慮に乏しい浪人者の
粗笨
(
そほん
)
、傍らの大刀ひっさげるや、ヌッと立って席を蹴った。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
十四、五の女の子にむかっても、真面目な精神は、
真摯
(
しんし
)
な物云いをしていることは、読者に感銘深くありました。
獄中への手紙:09 一九四二年(昭和十七年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私が知ってからの彼女は実に単純
真摯
(
しんし
)
な性格で、心に何か天上的なものをいつでも
湛
(
たた
)
えて居り、愛と信頼とに全身を投げ出していたような女性であった。
智恵子の半生
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
たぶん今日においてもこの「不完全」を
真摯
(
しんし
)
に静観してこそ、東西相会して互いに慰めることができるであろう。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
帆住博士はセツルメントの運動の
真摯
(
しんし
)
な信奉者として、忙しい時間をさいてはこのスラム街に来ていたのである。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
氏はその宗教論の冒頭に宗教的要求という一章を掲げて、宗教がいかに
真摯
(
しんし
)
に生きんとする者のやみがたき要求であるかを述べて次のごとく言っている。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
真摯
(
しんし
)
な一面にはそういう明るい上品な笑いが常にこもっていました。また機会があると、ヴァイオリンを手にして私たちにもそれを喜んで聞かされました。
アインシュタイン教授をわが国に迎えて
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
真摯
(
しんし
)
、親切、重厚などという美質は、それらを外見上持っているようにみられることは、それらの反対の性質を持っているとみられるよりは有利であるが
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
しかし、この人達も、短い練習の時間だけは、非常に
真摯
(
しんし
)
に、熱心で、
漕法
(
そうほう
)
は、英国の
剣橋
(
ケンブリッジ
)
大学を
除
(
のぞ
)
いては、皆、レカバリイが少ないのが、目につきました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
彼は
真摯
(
しんし
)
の人なり、彼は意の人に非ず、気の人なり。理の人に非ず、情の人なり。識の人に非ず、感の人なり。彼は塩辛らく、意地悪ろく、腹黒き人に非ず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
之を又
真摯
(
しんし
)
の態度だとかいって感服する
同臭味
(
どうしゅうみ
)
の人が広い世間には無いでもなかったので、私は老人がお宗旨に凝るように、
愈
(
いよいよ
)
文学に
凝固
(
こりかた
)
まって、政治が何だ
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
手管というのは、たとえばこんな工合いの術のことであって、ひとりの作家の
真摯
(
しんし
)
な精進の対象である。
玩具
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一——自由な
明晰
(
めいせき
)
な
真摯
(
しんし
)
な眼、ヴォルテールや
百科全書派
(
アンシクロペジスト
)
らが、当時の社会の
滑稽
(
こっけい
)
と罪悪とを
素朴
(
そぼく
)
な視力によって
諷刺
(
ふうし
)
させんがために、パリーにやって来さした
ジャン・クリストフ:13 後記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
、
ロマン・ロラン
(著)
この
真摯
(
しんし
)
にして厳粛なる二人の老博士の研究の前には、何かは知らず
咳
(
しわぶき
)
一つ遠慮しなければならぬような、学問の荘厳さを感ぜずにはいられなかったのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
真摯
(
しんし
)
なる動機によって行動するものにまで累を及ぼすことは私のかぎりなく遺憾とするところである。
映画界手近の問題
(新字新仮名)
/
伊丹万作
(著)
世界の大勢にも
楯
(
たて
)
つき、わざと険を
冒
(
おか
)
して辞せず、命をも賭けるほど熱情と
真摯
(
しんし
)
と沈勇とがあります。
婦人も参政権を要求す
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
それが珍奇を喜び、何事にあれ着実
真摯
(
しんし
)
な道を煙たがりやすい世間には、大変評判が悪かったらしい。
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
露西亜は世人の尤も危ぶむ国なり、而して今や此
真摯
(
しんし
)
なる大偉人を
有
(
も
)
てり、
謂
(
い
)
ふべし、前途
望
(
のぞみ
)
多しと。
トルストイ伯
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
余りに
真摯
(
しんし
)
です。而も検事や予審判事の前で、此の被告人が出鱈目を云う必要が何処にありましょう。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
しかしそれでも大多数の者は、すでに疑いもなくゾシマ長老の味方であった。しかもその中には、全心を打ちこんで熱烈
真摯
(
しんし
)
に彼を愛している者も少なくなかった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「皆さん、ここに奥田利根吉郎先生を御紹介申し上げます。論語の研究家と申しますよりも、最も
真摯
(
しんし
)
誠実な論語の実践家であり、苦行者であり、聖者であります」
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
慟哭
(
どうこく
)
数日、ついに血を
嘔
(
は
)
くに至った。その有様を見ながら、李陵はしだいに暗く沈んだ気持になっていった。彼はもちろん蘇武の慟哭の
真摯
(
しんし
)
さを疑うものではない。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
学術部長のウィーゼ博士は物静かで
真摯
(
しんし
)
ないかにも北欧人らしい好紳士で
流暢
(
りゅうちょう
)
なドイツ語を話した。
北氷洋の氷の割れる音
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
虚偽を去り矯飾を忘れて、痛切に自家の現状を見よ、見て而してこれを
真摯
(
しんし
)
に告白せよ。この以上適当な題言は今の世にないのでないか。この意味で今は懺悔の時代である。
序に代えて人生観上の自然主義を論ず
(新字新仮名)
/
島村抱月
(著)
信仰に関する
煩悶
(
はんもん
)
だとか、彼の年頃にはたれでもが経験するところの、いわゆる青春の悩みについて、幼稚ではありますけれど
如何
(
いか
)
にも
真摯
(
しんし
)
な文章が書きつづってあるのです。
日記帳
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
娘はそういう父の顔の、ずっと奥の方にある
真摯
(
しんし
)
さに刺戟されたが、やはり子供らしく
可笑
(
おか
)
しかった。同じことを繰り返されるということより、その真面目さが可笑しかった。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
故にその歌
真摯
(
しんし
)
にして古雅
毫
(
ごう
)
も後世
繊巧
(
せんこう
)
嫵媚
(
ぶび
)
の弊に染まず。今数首を抄して一斑を示さん。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
弁護士フェルメエレンの娘で、口もとがやさしく、大きい黒い、つやの好い眼は、
真摯
(
しんし
)
と夢想に溢れている。踊りをしながらよくころぶのだが、相手をきめる時は彼の所へ来た。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
いたずらにこれを
貶
(
へん
)
するが如きは、
敬虔
(
けいけん
)
の念乏しく
真摯
(
しんし
)
において欠くる所の態度である。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
そのあいだで鋭意に
真摯
(
しんし
)
に、劇の革新と向上とに努力をつづけていたのは
坪内逍遥
(
つぼうちしょうよう
)
博士で、博士は『早稲田文学』をその本拠として、絶えず指導的の論評を試みていたばかりか
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
京都にもこうした
真摯
(
しんし
)
な作家がいるのだ。恐らくこの男の名前は、文芸雑誌などには、六号活字ででも出たことはあるまい。が、この男は黙々として長篇の創作に従事しているのだ。
無名作家の日記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかして現代の婦人画家は模倣性が強くて少しも自己に資料を求めるというような
真摯
(
しんし
)
な態度は少しもありません。それが絵のみならず雅号のようなものからしてそうなのであります。
雷同性に富む現代女流画家
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
けれど真の哲学は他人相手の仕事ではなくして自己の魂の
真摯
(
しんし
)
なる労作である。私に哲学上の教養があったとするならば、それは“someone said”の哲学に関してであった。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
その態度にドコやら
真摯
(
しんし
)
なるものがあって、
左右
(
そう
)
なくは手出しのできない気勢に打たれて、そのまま見ているだけのものですから、群集心理の
如何
(
いかん
)
によっては、どう形勢が変化しないとも限らず
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“真摯”の意味
《名詞》
真 摯(しんし)
まじめで懸命にやるさま。
(出典:Wiktionary)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
摯
常用漢字
中学
部首:⼿
15画
“真”で始まる語句
真
真似
真面目
真実
真直
真中
真紅
真暗
真赤
真鍮