疣々いぼいぼ)” の例文
金井は年のころ四十ぐらゐ、疣々いぼいぼだらけの黒い四角な顔に度の強い近眼鏡をかけた、ずんぐりと背の低い男である。それから運転手の柳澤。
地獄 (新字旧仮名) / 神西清(著)
なるほど恐ろしい長身のっぽである。椅子いすに掛けて突ン出しているその両脚は人の二倍もありそうだ。面も馬面うまづらであり、紫ばンだ疣々いぼいぼだらけな皮膚に黄色いヒゲが唇の辺を巻いている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
疣々いぼいぼ打った鉄棒かなぼうをさしにないに、桶屋も籠屋かごやも手伝ったろう。張抜はりぬきらしい真黒まっくろ大釜おおがまを、ふたなしに担いだ、牛頭ごず馬頭めずの青鬼、赤鬼。青鬼が前へ、赤鬼が後棒あとぼうで、可恐おそろしい面をかぶった。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
褞袍どてらを浴衣の上に重ねる。それからぽつんとちゃぶ台の前に坐ると、傍の手あぶりには炭火がかっかとおこっている。それでも、ひしゃげた鉄瓶が、さわれば周りの疣々いぼいぼがまだぬくみかけたばかしである。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
またしきりに鳴く——蛙の皮の疣々いぼいぼのようでもあります。そうして、一飛ひとッとびずつ大跨おおまた歩行あるくのが、何ですか舶来の踊子が、ホテルで戸惑とまどいをしたか、銀座の夜中に迷子になった様子で。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なんと緑の疣々いぼいぼだ。胡瓜きゅうりの花も顔まけだ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)