玉杓子たまじゃくし)” の例文
水溜りに湧いたお玉杓子たまじゃくしでゲス。それがみんな丸裸体まるはだかの人間ばっかりなんですからいた口がふさがりませんや。相当に広い部屋でしたがね。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
四辺あたりに似ない大構えの空屋に、——二間ばかりの船板塀ふないたべいが水のぬるんだいせきに見えて、その前に、お玉杓子たまじゃくし推競おしくらで群るさまに、大勢小児こどもたかっていた。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それはお鶴のふっくらした左頬に、形も大きさも、お玉杓子たまじゃくしそっくりなあざが一つくっついていたことである。次郎はいつもそれが気になって仕方がなかった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「えっ、お玉杓子たまじゃくしが何を云うんだい。私という女ながらも大親分に、じかに口が利けるもんか。黙って引込んでいやあがれ」と、お鉄は突如いきなり小虎を突飛ばした。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
かびが生えてどろどろになった液の底に蠅が無数に沈んでいるインキ壺へペンを突っこんで、まるで楽符のお玉杓子たまじゃくしそっくりの文字をならべながら手紙を書きにかかった。
と思いながらも、私自身、ついその気味の悪い唄を口吟くちずさんでいた。成る程、その楽譜に踊るお玉杓子たまじゃくしのカーヴは正弦波サインカーヴとなって、体温表カルテのカーヴと甚しい近似形をなしていた。
あんなのはいわしの頭だって、お玉杓子たまじゃくしの尻尾だって、流行りさえすれば有難くなる奴ですよ
銭形平次捕物控:130 仏敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
『それじゃあ、お玉杓子たまじゃくしじゃないか。獅子丸を抱いてきて、突ッつかせるぞ』
玉杓子たまじゃくしが湧き、ちゃくとり——油虫の成虫——がわやわや云いながら舞いさわぐ下の耕地にはペンペン草や鷺苔さぎごけや、薄紫のしおらしい彼岸花が咲き満ちて、雪解で水嵩の増した川という川は
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「君はいつお玉杓子たまじゃくしの尻尾が取れるんだい?」
人生正会員 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
売婦ばいため、お玉杓子たまじゃくしめ、汚らわしい! と二三人、手と足を取って仰向けにひっくりかえしたので、泥水を飲んで真蒼まっさおになって帰ると、何条これを許すべき、突然いきなり細紐でぐるぐるまき
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「このお玉杓子たまじゃくしめ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さあどじょうにげる、うなぎすべる、お玉杓子たまじゃくし吃驚びっくりする。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)