“焦(あ)” の例文
そういう公算的(こうさんてき)射撃作戦は、どうも感心できないねえ。なぜ、そんなに焦(あ)せるのであるか。もっと落着いて、命中しやすい方針をとってはどうか。
しまいにはボンヤリしてしまって、ワケのワカラナイ泪(なみだ)ばかりがボロボロ落ちて来るんだ。コンナ事ではいけないと思って、焦(あ)せれば焦せるほど筆がいう事を聞かなくなるんだ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
うつくしきものを、いやが上に、うつくしくせんと焦(あ)せるとき、うつくしきものはかえってその度(ど)を減ずるが例である。人事についても満は損を招くとの諺(ことわざ)はこれがためである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今度はお互にお互を喰(く)らおうとしてもがき焦(あ)せる——そなたとしては、今の場合、その二人をどこまでも争わせ、魂をも肉をも、現世で食い散らさせるのを眺めるのも一興じゃと思うがな。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
心焦(あ)せるも双脚の骨筋今は堅からず
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
彼はなにかの隙があったら、お千と一緒に住む家を、焼け残った牛込か芝かに求めたいものだと焦(あ)せっていた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その五ヶ月の間を、妾はどんなに驚き、焦(あ)せり悶(もだ)えたかしれない。前には三人の双生児のことで思い悩んだ妾だったけれど、この度はそれどころではなかった。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
このままでは海底にドシンと衝突(ぶつ)かるばかりだと思われた。清二は、界磁抵抗のハンドルを、全開の位置に保持したまま、早く元への命令が来ればよいがと、気を焦(あ)せらせたのだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「まあそう焦(あ)せるな。あの手この手と、まだやることはたくさんある」